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円安vs円高
藤巻 健史 /宿輪 純一
東洋経済新報社 刊
発売日 2003-11-14


政府が行なう経済政策は、大きく金融政策、財政政策、為替政策に分けられる。しかし日本では、なぜか為替政策(通貨政策)が議論される機会が少なく、実際に有効な施策がとられた歴史も少ない。本書では、グローバルな経済競争時代における喫緊の課題であるこのテーマについて、対照的な主張を持つ2人の論客が丁々発止の議論を展開する。日本経済再生のためには、円高政策をとるべきか、円安政策をとるべきか。それぞれの論拠と対立点が明快に述べられていく。
その実績から伝説のトレーダーと呼ばれる藤巻は、短期的な円安によるいわゆる「資産効果」による景気浮揚を強調する。構造改革により本当の意味での競争力ある資本主義を築くには、助走のプロセスが必要だというわけだ。一方、エコノミストとして活躍する宿輪は、保護主義的な思考になれた日本人のメンタリティーを変革し、高度成長時代のような産業経済構造から脱皮することが必要だと説く。いわば原理原則論からの円高政策の主張である。
本書は、まず両者が持論を展開し、最後に直接の討論が収録されるという構成をとっている。議論が深まるうちに2人が意気投合するのは、日本の論壇では、そもそも「円安・円高」の定義そのものがはっきりしていないという点だ。それぞれのメリット、デメリットから、背景にイメージされる社会像までが前提として共有されないまま展開される議論は不毛だ。本書は、まさにその本格的論議の出発点として十分な役割を果たす内容を含んでいる。(松田尚之)

2人の主張はわかりやすいが・・・ 2005-01-09
第1章で藤巻氏が円安政策について、第2章で宿輪氏が円高政策について述べた後、第3章で2人の対談がまとめられている。
1章、2章の2人の主張は初心者にもわかりやすく書かれており、それぞれの主張をもっと詳しく読んでみたいと思わせる内容である。
ただ3章の対談は、2人が交互に自分の主張を述べているだけで、あまりかみ合っていないという印象を受けた。またその主張の内容も、1章2章で述べられていることの繰り返しであるため、新しいことはほとんど語られていない。1章2章がしっかりしているだけに、逆に残念である。

円高の定義の違い 2004-01-13
「円高が良いか?円安が良いか?」について
第一章、藤巻氏。
第二章、宿輪氏。
第三章、討論。
という読みやすい構成で解りやすく書かれた一冊。残念な点は、第3章で、藤巻氏と宿輪氏各自の円高の定義が違うにも関わらず、統一せず、そのまま討論を続けているので、かなりのちぐはぐ感がある。両氏の円高の定義に注意しながら読むと、結局2人の意見はかなり似ていることに気付く。

面白いが実はかみ合っていない対論 2003-12-17
〜藤巻氏は,外資系銀行支店長にもなったが基本的にディーラー一筋の方.
宿輪氏もマーケット部門のプロであるが,研究者としての顔も持つ論客.
この二人の共通点は,日本には確固とした通貨政策がなく,それこそが
今求められているものだという主張である.この主張は,とかく産業や
投資の添え物と考えられがちな為替に正当な評価を与えるものとして,
非常に重要である.
円安=藤巻氏,円高=宿輪氏 という立場だが,藤巻氏が「今この時点
で円安が必要.日本が立ち直れば円高になるのが自然」とするのに対し,
宿輪氏は円の国際化という観点からも円は強くなければならないという,
長期的視点も含めた円高の主張を繰りひろげる.
従って,個々の主張は示唆に富み面白いが,基本的にこの対談はポイン
トがずれている.そのためやや散漫な印象が残るのがマイナス1点.


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